1996年8月8日から本サーバシステムをインターネット上で国際的に公開する提供実験を行っている. この提供実験では,日本語(JIS,シフトJIS,EUC-JP),中国語繁体字(Big5),中国語簡体字(GB),韓国語(EUC-KR),タイ語(TIS)についてサービスを提供している. ここでは,この提供実験に対する5ヵ月間のアクセス記録の分析およびPittsburgh大学およびCalifornia大学Berkeley校で行った利用者評価の結果について述べ,本システムの実用性について検証する.
アクセスログの分析は,本提供実験に対する1996年8月8日から1997年1月7日までの5ヵ月間(153日間)のアクセスについて行った.
なお学内からのアクセスは分析から除外した.
この期間中のアクセス総数は7,092件,このうちMHTML文書のアクセスは1,473件であった.
表(p.
)で示した要求種別ごとのアクセス件数を表
に示す.
なお,REMOTEおよびPAGEは旧バージョンのサーバで使用していた要求種別で,現バージョンでは使用していない.
このうちMHTML文書のアクセスについて,ドメイン別のアクセス件数を表に示す.
なお不明とあるのは,IPアドレスからホスト名を取得することができずドメイン名が得られなかったものである.
また,利用者が選択した言語別のアクセス数を表に示す.
なおMultilingualとWesternは同じ言語指定として扱っているため,区別していない.
MultilingualとWesternが最も多いのは,ビューアの起動時に自動的にロードされるページがMultilingual(ISO-2022-JP-2)を使用する文書(p.
の図
を参照)であるためであると考えられる.
通常単一ホストからのアクセスのパターンは,最初のINITIAL要求の後にAPPLET要求,MHTML要求の順で行われるはずであるが,一連のアクセスでINITIAL要求の後にMHTML要求のないものが全体の27.6%あった. この原因としては,利用者側のWWWブラウザがJavaアプレットに対応していない場合や,対応していてもファイアウォール内からのアクセスであるためにJavaアプレットが実行できない場合,あるいはアプレットのロードに時間がかかるために利用者自身がロードを中止してしまう場合などがあるものと思われる.
この他アクセスログの内容を見ると,利用者の多くが一回に数ページのアクセスで終了するのに対し,長期にわたって継続的に使用していると見られるアクセスも一部にあった.
Pittsburgh大学のSchool of Information SciencesとHillman Library,およびCalifornia大学Berkeley校のSchool of Information Management and Systemsにおいて,計十数名に実際に本システムを利用してもらい,評価を行った. なお,評価をしたのは日本,中国,韓国およびタイからの留学生などであり,それぞれの場所から本学で稼働しているサーバシステムに接続するという形で行った.
この結果,大半の利用者から本システムが有効であるという評価を得ることができた. またコメントとしては,インラインイメージをリンクではなく直接表示できれば良い,スクロールボタンが不便であるなどの意見のほか,共用のコンピュータなどを用いていてフォントのインストールなど自身で表示環境を構築する権限がない利用者や,コンピュータに不慣れな利用者にとって有効である,などがあった.
アクセスログの分析の結果,多くのアクセスが数ページ以内で終了しているが,一部に継続的にアクセスしている利用者が見られること,現時点ではJavaアプレットが利用できないWWWブラウザを使用している利用者も多いことなどがわかった. 利用者の多くが数ページ閲覧するだけで終了しているのは,試用的にアクセスしている場合のほか,ビューアの使い勝手や文書の表示速度などに不十分な点があることも影響しているものと思われる. 継続的にアクセスしている利用者はそのURLからWWW上で新聞を公開しているサイトなどをアクセスしており,これは本ブラウザが実用的に使われていることを示しているといえる. なおJavaアプレットに対応していないWWWブラウザからのアクセスが比較的多いことに関しては,現在多くのブラウザがJavaアプレットへの対応を進めていることから今後改善されていくものと思われる.
利用者による評価では,大半の利用者から本システムの有効性について肯定的な評価を得ることができた. また本システムが一切のインストール作業を必要としないことから,容易に利用が可能であることも評価された.
ただしビューアの実用性に関しては,改良の余地があると思われる. 文書の表示速度の向上やスクロールの不便さの改善,インラインイメージや入力フォーム,テーブルなどの対応するタグの追加,文書の印刷機能の実現などが今後の課題として挙げられる.